SaaSの解約率を下げるには?原因の分析と改善施策

解約率が上がったとき、すべての顧客への連絡を増やしても、原因が解消するとは限りません。初期設定が進まない顧客と、機能不足で離れる顧客では必要な対策が違います。まず数値の定義を揃え、どの顧客が、いつ、何を理由に離れたのかを整理しましょう。
顧客数の解約率と売上の減少率を分け、契約時期・顧客規模・利用段階ごとに原因を探ります。兆候の検知だけで終わらせず、担当者・対応期限・検証方法まで決めることが改善の出発点です。
この記事の目次
顧客数と売上の解約率を分ける
| 指標 | 基本的な計算 | 分かること |
|---|---|---|
| 顧客数の解約率 | 期首顧客のうち期間中に解約した顧客数 ÷ 期首顧客数 × 100 | 顧客がどれだけ離れたか |
| グロス売上解約率 | 期首顧客の解約・減額によるMRR減少 ÷ 期首MRR × 100 | 既存の継続売上がどれだけ失われたか |
| ネット売上解約率 | (解約・減額MRR − 増額MRR)÷ 期首MRR × 100 | 既存顧客の増額を含めた売上の変化 |
MRRは月次の継続売上です。売上解約率には新規顧客の売上を混ぜず、同じ期首顧客群の変化を追います。ネット値は既存顧客の増額が大きいとマイナスになるため、顧客離脱がなくなったことを意味しません。
参考・出典:StripeのRevenue churn解説(2026年10月2日確認)
以下は計算例です。月初100社のうち3社が解約した場合、顧客数の月次解約率は3%。月初MRR500万円に対し、解約15万円・減額5万円・増額30万円なら、グロスは4%、ネットは−2%です。これは実績や目標水準を示す数字ではありません。
当月契約・当月解約、休止、再契約、年額契約の月割りなどの扱いも定義書に残します。ツールごとに算定方法が異なる場合があるため、同じ名前の指標でも分母と対象期間を確認してください。
全体平均の前に、顧客群を分けて見る
| 切り口 | 確認すること |
|---|---|
| 契約開始時期 | 特定の月に入った顧客の離脱が多いか |
| 利用段階 | 初期設定前・定着後・更新前のどこで離れるか |
| 規模・プラン | 小口の件数が多いか、大口の売上影響が大きいか |
| 獲得経路・契約時の期待 | 商談時の説明と実際の機能に差がないか |
| 利用目的 | 特定の用途だけで成果が出にくくないか |
同じ時期に利用を始めた顧客群を追う分析を、コホート分析と呼びます。契約から30日後、90日後など同じ経過期間で見ると、古い顧客と新しい顧客を混ぜずに比較できます。少数の群では1社の動きが大きく影響するため、割合と件数を併記しましょう。
解約理由を、行動できる粒度にする
「価格が高い」という回答だけでは、値引きが適切か判断できません。予算が削減されたのか、期待した成果が出ていないのか、利用者が減ったのかを分けます。担当者の推測と、顧客が話した事実も区別して記録します。
| 原因の例 | 確認する情報 | 対策の方向 |
|---|---|---|
| 初期設定が難しい | 止まった工程と未完了日数 | 設定手順を絞り、初回実行を支援 |
| 価値を実感できない | 導入目的、実施した業務、結果 | 成功条件を再合意し、活用方法を調整 |
| 必要な機能がない | 必須業務と代替可能性 | 製品担当へ連携し、対応可否を明確化 |
| 担当者が不在・異動 | 運用責任者と引き継ぎ状況 | 新しい窓口と運用手順を再設定 |
| 予算・組織の変更 | 事業方針と継続可能な範囲 | プランや契約条件を社内判断へ連携 |
| 支払い失敗 | 決済状況と顧客の利用意向 | 請求担当と連携し更新方法を案内 |
複数の理由がある場合は主因と補助要因を残します。解約理由の聞き取りを引き留めだけに使わず、今後の営業説明や導入手順の修正にも活用してください。
兆候と対応をセットで設計する
| 観測する兆候の例 | 最初に確認すること | 対応例 |
|---|---|---|
| 主要機能の利用が減った | 季節性、休業、計測不具合の有無 | 業務の変化を聞き取り活用方法を調整 |
| 初期設定が停滞 | 顧客・自社のどちらで止まっているか | 準備作業を小分けにし期限を合意 |
| 窓口から返信がない | 担当変更や連絡先の誤り | 事前に合意した別窓口へ確認 |
| 不満や同じ質問が増えた | 未解決の原因と対応履歴 | 責任者を決め回答・改善を追跡 |
「7日ログインがない」などの一律基準は、月に一度使う製品には合わないことがあります。利用頻度や顧客の業務に合わせて閾値を設定し、実際に解約へつながったかを後から見直します。ヘルススコアは優先順位をつける材料であり、顧客の状態を断定する答えではありません。
限られた時間で改善するための優先順位
売上影響が大きく、自社が変えられる原因から着手します。たとえば初期設定の同じ工程で多くの顧客が止まっているなら、個別連絡を増やす前に手順そのものを直す価値があります。
- 影響:何社に起き、どの程度の継続売上に関わるか
- 改善可能性:自社で原因を変えられるか、顧客事情が中心か
- 実行負担:誰がどれだけの時間で取り組めるか
- 検証可能性:改善したかを何で、いつ判断できるか
カスタマーサクセス代行は、定期的な状況確認や面談、記録、停滞顧客へのフォローを補う方法になります。一方、機能開発や価格方針は社内の意思決定が必要です。代行先が集めた声を開発・営業へ戻す担当者を決めておきます。
施策の効果を確かめる
施策前後で全体の解約率が下がっても、顧客構成や契約更新の時期が変わった影響かもしれません。可能なら開始条件が近い顧客群を比較し、難しい場合は同じ開始月の顧客群を継続して観察します。
| 段階 | 見るもの |
|---|---|
| 実施直後 | 対象者へ支援が届いたか、未対応が残っていないか |
| 利用の変化 | 設定完了・主要行動・顧客の課題が変わったか |
| 更新時期 | 対象群の継続と売上がどう変わったか |
| 費用との比較 | 維持できた利益に対して支援工数が過大でないか |
値引きで更新が増えても、収益が落ちていれば十分な改善とは言えません。解約率と合わせて売上減少・増額・支援コストを確認します。成果の出た支援を手順書に残し、対象を少しずつ広げてください。
よくある質問
解約率は何%を目標にすべきですか?
契約期間、単価、顧客規模、月次か年次かで意味が変わります。外部の数字だけで一律に決めず、自社の過去値と条件の近い顧客群を基に目標を設定します。
解約しそうな顧客全員に電話すべきですか?
まず兆候の確からしさと原因を確認します。操作案内で解決できる顧客、技術対応が必要な顧客、経営事情による顧客では、適切な対応が違います。
ネット売上解約率がマイナスなら安心ですか?
既存顧客の増額が減額を上回っていますが、一部の大口顧客への依存や顧客数の減少が隠れる場合があります。グロス値と顧客数も確認します。
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